銀蛇亭贅語 〜 莫扎特(モーツァルト)音盤記

モーツァルトの音盤(CD、DVD等)についてつづる視聴記。随時、推薦盤の紹介もおこないます。

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今年のモーツァルトの命日は…

         今年のモーツァルトの命日は…

寒冷前線通過により、荒れた天気となりました。本日12月5日はモーツァルトの命日ですね。

いまさら格別なことはいたしません。《レクイエム》を流しつつ献杯といったところでしょうか。ということで、今年選んだ《レクイエム》は、以下の演奏です。

requiem_otto.jpg  ■[NCA:60159 215](2005年録音)SACD

   ラルフ・オットー指揮
   ラルパ・フェスタンテ・ミュンヘン、マインツ・バッハ合唱団

   ユリア・クライテル(S)、ゲルヒルト・ロンベルガー(A)
   ダニエル・サンス(T)、クラウス・メルテンス(Bs)


最近になって入手した音盤でして、亭主お気に入り「ロバート・レヴィン版」によるピリオド楽器演奏であります。

モーツァルトの未完《レクイエム》にまつわる数々のお話や、煩瑣な改訂版問題について、ここで縷述することは今回見合わせますが、レヴィン版については少々……

ジュスマイヤー版を改訂したバイヤー版(1971)やモーンダー版(1988)よりも、近年評価の高いのがハイドン、モーツァルト研究の権威、ロビンズ・ランドンによる改訂版(1992)であり、それは、行き過ぎた感の否めないモーンダー版の反動ともいえる穏健版でありますが、これとほぼ時を同じくして発表されたのがレヴィン版です(arr.and completed R.D.Levin Hanssler Musik-Verlag,1993)。

モーツァルトのクラヴィーア協奏曲やソナタをフォルテ・ピアノで演奏するなど、演奏家としても活躍しているロバート・レヴィン(協奏交響曲K.297bの改訂でも著名)は、1987年に国際バッハ・アカデミー(ヘルムート・リリンク主宰)から1991年の《レクイエム》作曲200年記念演奏会のために新たな《レクイエム》改訂版を依頼されるのです。その初演は1991年8月24日、リリンク指揮よって行われ、同年録音もされました(HANSSLER)。

requiem_rilling.jpg  ■[HANSSLER:98146](1991年録音)

   ヘルムート・リリング指揮
   シュトゥットガルト・バッハ合奏団
   ゲヒンゲン・バッハ・カントライ


     *ソプラノは亭主最愛のクリスティーネ・エルツェ!

こうして完成したレヴィン版の基本的立場は、自身によりますと、

この《レクイエム》の200年の長い歴史を尊重しながら、ジュスマイヤー版における楽器法上・規則上・構造上の問題に目を向けようとしたものである。モーツァルトの自筆によるもの以外はすべてまがいものと見なす、といった割り切った考え方はきっぱりと退けた。目的は、改訂の手を可能な限り多く入れようとするのではなく、むしろそれを最小限に抑えることにあり、……伝えられてきた補筆は、それが語法的にモーツァルトの慣習に一致する限り、そのまま残されている。 (マルティン・パールマン盤へのライナー・ノート、1994年)

requiem_martin.jpg  ■[TELARC:CD80410](1994年録音)

    マルティン・パールマン指揮
    ボストン・バロック


というものです。ところが、実際聴いてみるとバイヤー版やモーンダー版以上に改訂されている印象を受けるのですね。

ジュスマイヤー作曲の「サンクトゥス」「ベネディクトゥス」など、これで改訂の手を「最小限に抑えている」とは到底思えません。これは、バイヤー版が、ジュスマイヤーの骨格を残した上で、作曲上の誤謬のみを訂正したのに対し、レヴィン版は、ジュスマイヤーのフレーズを借用しつつ、モーツァルト的に“作曲し直す”という高度な技に挑んだ結果であるように思えます。さすがは数々の未完断章作品の補筆完成を成し遂げているレヴィンですね。

実際、続誦の「ディエス・イレ」「トゥーバ・ミルム」なども、これまで音を減らすことに重点が置かれていたバイヤー版等に比して、ずっと“積極的”に作曲されています。「ラクリモサ」は、モーンダー版とは違い、ジュスマイヤーの補筆に最後まで準拠しつつ、新発見の「アーメン・フーガ」に移行させるのです(フーガは88小節)。いずれにせよ、モーツァルト様式の即興演奏にも長けたレヴィンの才気溢れる改訂版といえましょう。

当該盤は、亭主架蔵レヴィン版《レクイエム》(数えていませんが8種ほどか…)のファースト・チョイスとはなりませんでしたが、清澄な独唱陣と秀逸な合唱群とが終始起伏ある演奏を繰り広げていて、指揮者オットーの主張がひしひしと伝わってまいります。ただし、管楽器に比して弦セクションが弱く、せっかくのレヴィン補筆の妙がよく聴き取れないといった難があります。それでも一聴の価値あり。

ちなみに、亭主愛聴のレヴィン版《レクイエム》は、以下のラバディ盤であります。

requiem_NY.jpg  ■[DORIAN:DOR90310](2001年9月20日、ライヴ、ニューヨーク)

   ベルナール・ラバディ指揮
   レ・ヴィオロン・デュ・ロワ(Les Violons du Roy)
   ラ・カペレ・デ・ケベック(La Chapelle de Quebec)


あの9.11同時多発テロの数日後に、偶然にも開催されることとなったニューヨークでの演奏会録音。レヴィン版の長所がいかんなく発揮された、きわめて質の高いライヴです。

久々にこのライヴ盤を聴き直してみたくなりました。《レクイエム》を一夜に何度もフル鑑賞することは、まことに稀ではありますが、今日は特別です。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

  1. 2008/12/05(金) 21:25:37|
  2. 声楽曲

プロフィール

KonLon

Author:KonLon
    戊子季春開亭

モーツァルト歴:
    (まだ?)30数年
亭  訓:
   文質彬彬

*記事中の一人称「亭主」とは管理人のことです。

  詳しい亭主紹介はこちら

*上掲の画像…
プラハ郊外のベルトラムカ荘にて[2006.9.20]...一応階段中央に写っています...

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