ききこんでいるひと篇(1)ことさらに奇をてらった選曲にはしませんでした。モーツァルティアンにはおなじみの曲ばかりですが、まだまだ演奏される機会の少ない隠れた名曲群です。
■シンフォニー[第14番] イ長調 K.114滅多に演奏されない初期・中期のシンフォニーだが、珠玉の作品が多く、ここはこの第14番で代表させた。この曲は2管編成で多いオーボエではなく、フルートを使用しており、響きやフレーズが前後の作品群と異なる。
【推薦盤】トレヴァー・ピノック指揮
イングリッシュ・コンサート (1992年録音)[ARCHIV:471-666-2]
本来、「名演」が存在する類の曲ではないので、ここはありのままを素直に音にした演奏を挙げた。チェンバロのコンティヌオ付き。
【裏推薦】トーマス・ファイ指揮
シュリーバッハ室内管弦楽団 (1998年録音)[HÄNSSLER:98-335]
アーノンクールの薫陶を受けた、若きファイが金管を強調した特異な演奏を聴かせる。モダン楽器による演奏だが、金管のみ古楽器使用。
同じフルートを使った中期の名作、イ長調の第21番K.134も是非聴いて欲しい。25番《小ト短調》や29番だけが中期シンフォニーではない。演奏は、フィリップ・アントルモン指揮、ウィーン室内管弦楽団(1989年録音)[HMF:HMT7901304]が曲想をとらえていてお薦め。
■ディヴェルティメント[第2番] ニ長調 K.131モーツァルト16歳の時の作品であるが、同時期のシンフォニーに比して管楽器の扱いが多彩であり、まったく飽きさせない。フルート、オーボエ、ファゴット、それにホルン4本(!)が全6楽章のいたるところにちりばめられており、モーツァルトが時折やるメロディーの大量消費が耳に心地よい。第2楽章は絶品。
【推薦盤】ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
(1987年録音)[PHILIPS:420-924-2]
常にモーツァルト指揮者といわれるマリナー。しかし、本質的には違うと思う。今後は恐らく廃れていくタイプの演奏であろうが、この曲ではマリナーの欠点がプラスに作用している。
【裏推薦】ジョージ・セル指揮
クリーヴランド管弦楽団 (1963年録音)[SONY:SBK62830]
モーツァルト指揮者と呼ばれない可哀想なセル。いやいや、彼もモーツァルト指揮者だ。そういえば、フルトヴェングラーもモーツァルト指揮者と呼ばれることはないが、彼が遺した《魔笛》のライヴ(3種のザルツブルグ音楽祭録音うち、エーリッヒ・クンツがパパゲーノを歌う1951年のものがベスト)を聴けば考えは変わるだろう[FOYER:3CF2003]。
■オーボエ協奏曲[断片] ヘ長調 K.293これは、有名なK.314ではない。70小節(前奏部分)まで書かれているが、その後は独奏パートのみのトルソー。素晴らしい曲であり、完成されなかったことが残念。
【推薦盤】インゴ・ゴリツキ(オーボエ)
ヴォイチェフ・ライスキ指揮
ポーランド・チェンバー・フィルハーモニック
(1992年録音)[CLAVES:CD50-9302]
ロバート・レヴィンによる補完版を用いての演奏で初録音。ゴリツキのオーボエは、硬めの音色であるが、モーツァルトには、名手ホリガーなどよりもむしろ合っている。
上記盤には有名なK.314もカップリングされており、こちらも名演。K.314は、古楽器であれば、ミヒャエル・ニースマン(バロック・オーボエ)、コンチェルト・ケルンの演奏(1990年録音)[CAPRICCIO:10-375]が内声部を強調していて刺戟的。
【裏推薦】ピアノとヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調 K.315f
モニカ・レオンハルト(ピアノ) ライナー・カスマウル(ヴァイオリン)
ヨルゲン・カスマウル指揮 アムステルダム・モーツァルト・プレーヤーズ
(1990年録音)[CHANNEL CLASSICS:CCS1190]
ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのための協奏交響曲 イ長調 K.Anh104
アイオナ・ブラウン(指揮・ヴァイオリン) 今井信子(ヴィオラ)
スティーヴン・オートン(チェロ)
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
(1989年録音)[PHILIPS:422-670-2]
別の曲であるが、ここでは未完に終わったモーツァルトの協奏曲から2曲紹介。いずれもフィリップ・ウィルビーの補完版で聴くことができる。聴くたびに未完成が惜しまれる。
■弦楽五重奏曲[第5番] ニ長調 K.5936曲ある弦楽五重奏曲のなかでも何故か演奏機会が少ない。よく知られた3番や4番ももちろん素晴らしいが、この5番も是非聴いて欲しい。第2楽章アダージョの転調など聴き所が多い。
【推薦盤】アンサンブル・ヴィラ・ムジカ (2001年録音)[MD+G:MDG304-1106-2]
ベルリン・フィルのモーツァルトはどうもいただけないが、個々のメンバーが悪いわけではないらしい。このアンサンブルは、ベルリン・フィルとバイエルン放送響とのメンバーからなり、奇をてらわないながらも随所にひらめく解釈を入れる。
【裏推薦】アレクサンドレ・マグニン(フルート)
ヤナーチェク弦楽四重奏団 (2000年録音)[DA CAMERA MAGNA:DACA77062]
フルート五重奏曲版による演奏。第1ヴァイオリンのパートをフルートに替えたものでほぼ原譜通り。
古楽器の演奏であれば、モニカ・ハジェットとパブロ・ベズノシュウクとがバロック・ヴァイオリンを務めるハウスムジーク(1992年録音)[EMI:CDC754876-2]が曲の核心に迫っている。
■ピアノ三重奏曲 ホ長調 K.542まったくピアノ三重奏曲はどれも素敵。K.502、496、254もいい。選択不能ゆえ上記で代表させた。このジャンルにおける学者の評価は必ずしも高くはないが(室内楽曲としての彫琢の甘さということだろう)、K.542は三大シンフォニーと同時期の作曲だけあって、さすがに一頭地を抜いている。第3楽章に挿入される嬰ハ短調エピソードはとりわけ印象的で、モーツァルトにしては珍しく長目に引っ張ってくれていて、聴くものを悦ばせる。
【推薦盤】スティーヴン・ルービン(フォルテ・ピアノ)
モーツァルティアン・プレーヤーズ (1990年録音)[HMF:HMU907034]
この演奏は、ピアノ三重奏曲のよさを存分に引き出している佳演。ルービン奏でるフォルテ・ピアノの音色と即興性とがまことに心地よい。
【裏推薦】トリオ・パルナッソス(1990年録音) [MD+G:MDG303-0373-2]
少々品が良すぎるが、モダン楽器による演奏として挙げた。もちろんピアノ三重奏の録音が不遇な時代から積極的に取り上げてくれていたボザール・トリオ盤も名演(1967年録音)[PHILIPS:446-154-2]。
テーマ:クラシック - ジャンル:音楽
- 2008/03/27(木) 15:01:17|
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