寺神戸亮とモーツァルト(2):
独奏者としての寺神戸亮とモーツァルト【その弐】ところで、独奏者としての寺神戸亮とモーツァルトを語るにあたって、何かが足らないわけですね。それは、彼演奏のヴァイオリン・ソナタ(より正確には、“ヴァイオリン等の助奏附きクラヴィーア・ソナタ”)がない、ということなのです。コレッリ、C.P.E.バッハ、ルクレール…といった作曲家のソナタはたくさん録音しているのですけどね。
同門の若松夏美には、既に小島芳子(1961−2004)と組んだ選集がスウェーデンBISから1枚出ていますが、小島の急逝によりこのコンビによる全集化はなくなりました(残念!)。若松は82年にデン・ハーグ音楽院に留学しているので、寺神戸の“姉弟子”ということになるのかなあ。
■BIS:BIS-CD-1123 (1999、神戸松蔭女子大学教会)
ヴァイオリン・ソナタ K.296、379、376、380 若松夏美(バロック・ヴァイオリン)
使用楽器:Carlo Tononi,Bologna 1700.Bow:Dodd,England
小島芳子(フォルテ・ピアノ)
使用楽器:Christopher Clarke,Cluny 1994 after Anton Walter,Vienna c.1795もちろん、師クイケンも早くからソナタに取り組んでおり、なんと1977年(!)にはレオンハルトとともにSEONレーベルにK.58、304、481のソナタを録音しております(K.481は佳演)。
■SONY:SBK62953 (1977)
ヴァイオリン・ソナタ K.58、304、481 シギスヴァルト・クイケン(バロック・ヴァイオリン)
使用楽器:Maggini School,Brescia,mid-17th century
グスタフ・レオンハルト(フォルテ・ピアノ)
使用楽器:Anton Walter,Vienna,c1795-1805さらに、90年代初頭に始めてプッツリ途絶えていたACCENTレーベルへの録音も2005年に完結させ、“マンハイム・ソナタ”以降の主要曲を5枚組にまとめました。

シリーズ1枚目初出盤
(ACC9175)
1枚目(ACC9175)が出たとき、大学生であった亭主は喜んで買いもとめたものの、そのあまりにフツウでジミな演奏にかなりがっかりした記憶がありますが(当時はもっと刺激的でバリバリ弾きこなすような演奏ばかりを求めていたのでしょうね)、今ではけっこう愛聴盤ですよ(音程の甘さを味わいにかえるとは…)。
■ACCENT:ACC20041 (1991、1992、1995、2005)
ヴァイオリン・ソナタ集
K.380、K.526(91年録音)[初出:ACC9175]
K.378、K.481(92年録音)[初出:ACC9292]
K.376、K.454(95年録音)[初出:ACC95113]
K.301、K.302、K.303、K.304、K.377(05年録音) シギスヴァルト・クイケン(バロック・ヴァイオリン)
使用楽器:Giovanni Grancino,Milano ca.1700
ルック・ドヴォ(フォルテ・ピアノ)
使用楽器:Claude Kelecom,Brussels 1978 after J.A.Stein,Augsburg 1788 [Disc.1-3]
Claude Kelecom,Brussels 2001 after J.A.Stein,Augsburg 1788 [Disc.4・5]残念ながら寺神戸亮のモーツァルトのヴァイオリン・ソナタは現存しておりませんが、これは将来の大いなる楽しみでもあるわけで、佳きパートナーをみつけて是非とも取り組んでもらいたいと思います。
現在、寺神戸は別の境地を探りつつあるようなので(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの復活演奏。
ココをクリック)、モーツァルトに関しては主に手勢レ・ボレアードとの指揮活動を充実させてくれれば亭主は満足なのですが(近々《ハ短調大ミサ》を指揮)、歳を重ねたあかつきには艶やかさに渋さの加わった音色でソナタを録音してくださいませ。それとヴァイオリン協奏曲の単独全集再録音!
ところが…、これは、ご自身もヴァイオリンを弾かれるKoyamaさんという方のブログ記事(4月20日付)をたまたま知人から教えてもらい知ったのですが、今年の4月6日、国立科学博物館日本館講堂におけるレクチャー・コンサート“楽器の進化・ヴァイオリン編”で寺神戸がソナタを披露したというのです。おそらくこれまでもコンサートではモーツァルトのヴァイオリン・ソナタを取り上げることはあったと思いますが、つい最近、それもレクチャー・コンサートでねえ…。残念ながら亭主は実聴できなかったのですが、Kyamaさんが快く紹介・引用を許可してくださったので、以下かいつまんで……(「 」内はブログ引用文)
レクチャー・コンサート:楽器の進化・ヴァイオリン編 〜寺神戸亮〜
国立科学博物館・日本館講堂、4月6日(日) 14:00開演
ヴァイオリン:寺神戸亮 チェンバロ、オルガン:上尾直毅
主催:東京のオペラの森実行委員会 共催:国立科学博物館「ヴァイオリンという楽器の歴史を、弓や奏法の変化と合わせてたどっていくという趣旨の演奏会」で、「前半の曲目は、アンジェロ・ノターリ、ビアッジョ・マリーニ、ダリオ・カステッロ、マルコ・ウッチェリーニというルネサンス後期からバロック初期の作曲家のソナタ」だったそうです。寺神戸は当コンサートのためにヴァイオリン3挺、弓4張を持参してきたよし。
1曲目のノターリのソナタで寺神戸は、ヴァイオリンを肩の上に載せて弾くクイケン流の奏法ではなく、左の胸に押し当てるような奏法で演奏を始めたので、「いきなり度肝を抜かれ」たとか。「残されている絵画をもとに1年ほど前から実験的に試していて、そのような奏法からも新しい発見がたくさんある」と演奏後に説明されたそう。
後半のプログラムは、変調弦によるビーバーのロザリオ・ソナタ(←佳曲ですよね)、ルクレールのソナタ第3番、ヘンデルのニ長調ソナタ、J.S.バッハのソナタ第4番…と盛りだくさん。そうして、最後にモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ K.301が取り上げられたそうです(第1楽章だけでしょうね)。「タンゲンテンフリューゲルのモーツァルト(追補)」で紹介した“マンハイム・ソナタ”の第1曲目ですね。
Koyamaさんは「ヘンデルのソナタあたりで腹一杯になっていた」ところにバッハ、モーツァルトが聴けるというので、「まるで食後に高級なデザートが次々と運ばれてくるよう」との思いだったそうです。
のびやかな主題で始まるこの曲を寺神戸はどのように弾いたのでしょうね。先日、Koyamaさんにメールで「やはりチェンバロ伴奏だったのですか?」と伺ったところ、そうだったようで、演奏前に「これはチェンバロのための曲ではありませんが、今回はコンサートの都合上チェンバロでやります」といった断りが寺神戸からあったそうです。
とはいうものの、当時実際はチェンバロと演奏されたこともかなり多かったであろうことは亭主前述(「タンゲンテンフリューゲルのモーツァルト」)いたしました。しかし、“マンハイム・ソナタ”以降では最近のリザ・マリア・ランドグラーフ(バロック・ヴァイオリン)とトビアス・コッホ(チェンバロ)による音盤(GENUIN:GEN87096、06年)が出るまで、音響的にはなかなか実聴できなかったわけで、それを結果的に“実演”で聴くことがかなったKoyamaさんは、幸運でしたね(寺神戸のモーツァルト・ソナタ演奏という二重の意味で)。
そうそう、“マンハイム・ソナタ”以降のチェンバロ伴奏盤(←「伴奏」というのは正確な言い方ではありませんが)は皆無だったと先日書き、それを受けて上述しましたが、だいぶ以前、“マンハイム・ソナタ”としては揃っていませんが、以下の音盤がありましたね。補足しておきます。
■CRD:CRD3435
ヴァイオリン・ソナタ集
K.377、K.301、K.305、K.379
ハワード・デイヴィス(Vn)
ヴァージニア・ブラック(Cemb)次回は、「室内楽奏者としての寺神戸亮とモーツァルト」と題しておおくりいたします。
※その前に、亭主のもとに「シギスヴァルト・クイケン指揮による最新モーツァルト演奏」
について問い合わせがあったので、簡単に紹介する予定です。追補 早速Koyamaさんからメールをいただきました。寺神戸のヴァイオリン・ソナタ K.301の演奏は、全楽章演奏されたそうです(といっても全2楽章ですが)。第1楽章 Allegro con spirito はけっこう長いので(リピートすると13分程)、亭主はこのコンサートの性格から当然…、と即断したのですが、よみはハズレました。寺神戸はきっちり全曲弾いたのですね(装飾はどうだったのだろう…)。Koyamaさん、ありがとうございました。
テーマ:クラシック - ジャンル:音楽
- 2008/06/11(水) 08:37:45|
- オムニバス
-
-