ジョージ・セルのモーツァルト・ライヴ(1957)セルとモーツァルトとの相性については、昔から愛盤家の云々するところ。
おおかたは「好きじゃない」「冷たい」派と思いますが、少数ながら「好き!」派のこだわりは相当なもので、けっこう強く「セルのモーツァルトは凄い、熱い」ことを主張します。
亭主は、といえば、セルは好きですねえ。しかし、何でもかでも、というわけにはまいりませぬ。よく取り上げられるシンフォニーの録音よりも、コンチェルトの伴奏、セレナード・ディヴェルティメント類、また指揮ではなくてセルがピアノを弾いたヴァイオリン・ソナタが佳いですな。
コンチェルトの伴奏では、世評高い一連のカサドシュ盤(SONY)よりも、ルドルフ・フィルクスニーの伴奏をアムステルダム・コンセルトヘボウ管で指揮した1958年のザルツブルク・ライヴ(SONY)が…
管弦楽曲では、クリーヴランド管でセル愛好のディヴェルティメントK.131(1963年、SONY)が…
ヴァイオリン・ソナタでは、ヨーゼフ・シゲティ(K.454・481)の伴奏(1950年代、VANGUARD)とラファエル・ドルイアン(K.376・301・304・296)の伴奏(1967年、SONY)とが…
すぐに思い浮かぶ亭主愛聴盤です。
そんなところへ今回の初出ライヴ盤。貴重な(マニアック?)ライヴ音源を陸続発掘するARCHIPEL。その詳細は…
■ARCHIPEL:ARPCD0398
交響曲第29番 K.201
ピアノ協奏曲第25番 K.503
交響曲第40番 K.550
レオン・フライシャー(P)
ジョージ・セル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1957年8月3日、ザルツブルク音楽祭ライヴまずト短調シンフォニーは、複数の録音が伝わっていますよね。クリーヴランド管(1967)、クリーヴランド管(1955)、また大阪万博のおりの来日コンサート(1970.5.22)がいずれもSONYから発売されていています。
今回のライヴ、第1楽章は55年盤よりも67年盤に近いテンポ感。上掲盤を超えるものではないと思います。
第29番は、セル唯一の録音でないかな。セルは28番なんてのをスタジオ録音しているくせに、25番や29番は結局しなかったのですね。室内楽的な要素のある29番は、ぜひともクリーヴランド管と録音を残してほしかったものです。今回は残念ながらベルリン・フィル。
結論としては、当ライヴで一番の出来。第1楽章は想像していたよりもずっと遅く、内声とのバランスをとりつつ、丹念に作り込んだ演奏。終楽章も見事でした(例のごとく金管を強調)。
さて、期待したコンチェルトは、あのレオン・フライシャーの独奏です。フライシャーは1928年サンフランシスコ生まれ。イエルク・デムスと同い年で、シュナーベルのお弟子さん。1952年のエリーザベト王妃国際コンクール優勝の俊英だったのですが、脂がのるはずの60年代初頭にジストニアによって指が麻痺。演奏活動中止に追い込まれたのです(近年復活したそうです)。
セルのピアノ協奏曲伴奏としては、上述ロベール・カサドシュとの一連の録音があまりにも有名ですが、きわめて不可思議なことに、カサドシュは20番台にあって第25番だけはセルと録音しなかったのですよ(ビゴー指揮ラムルー管とVOXには録音あり)。
曲想的にいって、セル個人としてはやりたかったんじゃないかなあ、と思います。事実、ゼルキンと録音していますし(表記上はコロンビア響)、フライシャーとも当ライヴの2年後、1959年にクリーヴランド管とスタジオ録音しているのです(下に掲載の10枚組セル―モーツァルト・ボックス所収、SONY:82876867932)。

*かなり楽しめるボックス。
ドルイアンとのソナタ、ブダペスト四重奏団員との
ピアノ四重奏曲K.478・493(1946年)も入っています。
ソニー独自のDSDによる下品なリマスターがちょっと耳障りだけども…。
25番は、亭主ただいまカール・ゼーマンのライヴ盤(1979年、ORFEO:C447-961B)にご執心なので、ちょっと物足りないです。第1楽章が速いのですよねえ…(2年後のスタジオ録音とタイムはほぼ同じ)。フライシャーのピアノは、セルのスタイルにあわせたもの。タッチは十分に美しいのですが、もうひとつ腰の据わった演奏が聴きたかったです。
最後に録音ですが、57年としては万全とはいえないものの、総じて聴きやすく、セルの唸り声もよく拾っています。拍手はうまくカットされていますが、こういう一日の演奏会を収めたものでは無理にカットしないでほしいですね。
【追 補】ジョージ・セル(1897-1970)は、1949年から死の前年まで、しばしばザルツブルク音楽祭に登場しましたが、就中当盤公演の前後は6年にわたって連続出演しています。
オーケストラは様々ですが、ほとんどの年でモーツァルトを取り上げており、そのライヴ録音が残されています。架蔵の音盤は、以下のとおり…(お薦めは58年のライヴ)

ACO盤

フランス国立管盤
■1956年8月7日 [ORFEO:C652052]
歌劇《後宮からの逃走》
ジョージ・セル指揮、ウィーン・フィルハモニー管弦楽団、エリカ・ケート(コンスタンツェ)*当音楽祭で交響曲第40・41番、ピアノ協奏曲第23番(ピアノはセル自身)が演奏されたようだが、亭主未聴。
■1957年8月3日 当盤*歌劇はリーバーマンの《女の学校》(ドイツ語版)初演を指揮。
■1958年8月6日 [SONY:SICC458]
交響曲第41番、ピアノ協奏曲第9番(ピアノ:ルドルフ・フィルクスニー)
ジョージ・セル指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団*上記盤には未収録だが、交響曲第33番も演奏。下記7枚組に収載。
■1959年 [GALA:GL100.502]
歌劇《魔笛》
ジョージ・セル指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、クルト・ベーメ(ザラストロ)■1959年8月3日 [SONY:SICC457]
交響曲第35番、ヴァイオリン協奏曲第5番(ヴァイオリン:エリカ・モリーニ)
ジョージ・セル指揮、フランス国立放送管弦楽団*上記盤にはハイドンの交響曲第92番も収録。
セルのザルツブルク音楽祭公演の全般を知るには、以下のCDがあります。ORFによるリマスタリングにセンスがないのが残念ですが(ノイズはないが、薄っぺらい貧音に改悪)、貴重な正規音源ではありますね。

■ジョージ・セル:ザルツブルク音楽祭ライヴ1958〜1968
[ORFEO:R704077] 7枚組テーマ:クラシック - ジャンル:音楽
- 2008/04/10(木) 21:52:31|
- 指揮者
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