本格的な春の陽気となった今日、取り出したのは先日購入したアンダのコンチェルト録音。
アンダの協奏曲といえば、1961〜69年にかけてカメラータ・アカデミカ・ザルツブルクと指揮も兼ねて録音したDeutsche Grammophon盤が有名であって、これまでもたびたび再発されてきましたよね。しかし、今回の盤はなんと初出のライヴ録音(1956〜1969)です。
カーゾン―クーベリック―バイエルン放送響の協奏曲(第21・24番audite95.453、第23・27番audite95.466)という貴重音源を発掘した独AUDITEレーベルが、GÉZA ANDA EDTION(全4巻)の第1弾として、モーツァルト協奏曲集2枚組を出したのです! 詳細は以下のよう…
AUDITE盤
ジャケット裏表紙*請拡大
■AUDITE:AU23407
Disc.1
ピアノ協奏曲第20番K.466
ピアノ協奏曲第22番K.482
ゲザ・アンダ(P & 指揮:K.466)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮(K.482)
ケルン放送交響楽団
録音: 1969.11.28(K.466)、1960.4.4(K.482)
Disc.2
ピアノ協奏曲第23番K.488
交響曲第28番K.200
ピアノ協奏曲第21番K.467
ゲザ・アンダ(P & 指揮K.488・200)
ヨゼフ・カイルベルト指揮(K.467)
カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク(K.488・200)
ケルン放送交響楽団(K.467)
録音:1962.1.28(K.433・200)、1956.1.16(K.467)
WDRのアーカイヴあたりからか、よくもまあ集めてきたなあ、と思いますね。一部古さを感じさせるものの、いずれの録音も明瞭であって、アンダ独特のタッチがたいへんによく伝わってきます(ピアノがかなりオンに捉えられている)。一聴したところでは、第22番(2年後の全集盤より佳い)と第23番はたいへんな名演。珍しいアンダ指揮の交響曲も朴訥としていておもしろい演奏です。名匠シルヴェストリ・カイルベルトとの共演も聴きもの。全集盤の薄っぺらい録音(特にCD)では伝わりにくかったアンダのピアニズムが堪能できます。
殊に22番は全集盤を大きく凌駕する名演。まずシルヴェストリの指揮がまことに佳い。テンポ絶妙、べたつかず質実で媚びない音作りに好感がもてます。この頃のドイツ地方オケ(←褒め言葉です)は、木管も含めてそんなに美しい音は出さないかわりに、滋味ある職人的演奏をするのですよね。意味不明な譬えをすれば、平カンナでツルリと削った肌合いではなく、“槍カンナ”で削った木の肌合いなんです。
第2楽章は絶品。アンダの好みに従って、スロー・テンポなのですが、まったくダラつかないばかりか、冴えわたったアンダの深いタッチのなか、心地よい緊張感が持続します。それが解き放たれる第3楽章。最後のアンダ作のしゃれたアインガングまで、途中のアンダンテ部分もなんのその、一気に聴かせます。
この録音、ライヴということですが、雑音らしい雑音もなく、演奏自体のキズもないので、放送用録音ではないかなあ。全集盤よりずっとよい音。どちらにしても、この曲の亭主ベスト盤になりました。
実は、アンダの20番台以外、つまり5・6・8・9番、11〜19番のコンチェルト演奏は亭主の苦手とする演奏群(全集盤)なのですが、当盤のような演奏・録音であれば…と思いますね。
ゲザ・アンダは1921年ブダペスト生まれ、1976年にチューリヒにて没。同世代としては、タイプは異なりますが、ミケランジェリ(1920年生)やルドルフ・フィルクスニー(1922年生)がいますね。モーツァルト弾きとしてはカール・エンゲル(1923年生)も近いです。同郷の先輩としては、かのアニー・フィッシャー(1914年生)がおります。50代で亡くなったわけで、あと10年は生きてほしかったとせつに思います。
アンダのモーツァルトについては、ソナタの録音は寡聞にして知りませんが、協奏曲は上述の覇気ある全集を筆頭に、今回の輸入盤ライヴ、次掲する晩年の名録音(ちょっと枯れ過ぎか…)あたりが入手しやすいでしょう。
EURODISC盤
■EURODISC原盤 DENON:COCO70779(1973年録音) *「クレスト1000」シリーズ
第20・21番 ウィーン交響楽団 *カデンツァは自作
また、既発売のライヴ録音としては、
■ARCHIPEL:ARPCD0392 (1953.1.10)
ピアノ協奏曲第17番
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ケルン放送交響楽団
*カップリングはカイルベルト指揮のヴェスペレK.339(!)
カイルベルト盤
OEHMS盤
があって、モノラルながらアンダのタッチが堪能できます。他に、
■OEHMS CLASSICS:OC578 (1956.8.19)
SALZBURGER FESTSPIELE 1956―MOZART-MATINEE
ベルンハルト・パウムガルトナー指揮 ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団
《牧人の王》序曲、ピアノ協奏曲第22番、
コンサート・アリアK.583・419・383(Sop:リタ・シュトライヒ)、交響曲《パリ》
があります。ピアノの音が小さめなのが残念ですが、第2楽章が異様に遅いなど特徴のある演奏であり(今回紹介の盤も遅いので、これはアンダの指示か)、パウムガルトナーの指揮はともかくも当日の演奏会がそのまま収められている点は貴重ですね。同様の企画として翌年のザルツブルク音楽祭「モーツァルト・マチネー」を記録した以下の盤があります。
■ORFEO:C572-011-B (1957.8.4)
ベルンハルト・パウムガルトナー指揮 カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク
《劇場支配人》序曲、2台ピアノのための協奏曲K.365(第1ピアノ:クララ・ハスキル)、
コンサート・アリアK.208・368(Sop:エリカ・ケート)、交響曲第13番
ORFEO盤
ARCHIPEL盤
これは、クララ・ハスキルとの協奏曲第10番です。ハスキルは“モーツァルト弾き”とされていますが、そのレパートリーはけっこう偏っていて、協奏曲の演奏も第9・19・20番を中心に数曲を何度も取り上げています。そんななかにあって、このK.365は気に入っていたらしく、つごう3種の録音が残されています。上記ライヴ盤に先立って以下の2盤(スタジオ録音)が知られ、いずれもセカンド・ピアノはゲザ・アンダ。
■TAHRA:TAH523 (1954年録音)
パウル・ブルクハルト指揮 ベロミュンスター・スタジオ管弦楽団
■ARCHIPEL:ARPCD0339(1956年録音)
アルチェオ・ガリエラ指揮 フィルハーモニア管弦楽団
TAHRA盤
ハスキルとアンダ*請拡大
神経質なハスキルが毎度パートナーに選択しているのだから、グリュミオー同様に相当ウマがあったのでしょうねえ。
57年盤はライヴの雰囲気が伝わる演奏ですが、純粋にピアノの音色を楽しむならば、56年盤です。ただあまりに明瞭に過ぎて耳につくという向きには、最初の録音54年盤をお薦めします。
いずれにせよ、本日紹介の新出ライヴ録音が亭主推奨アンダ音盤の筆頭に躍り出た、といえるでしょう。しばらくは楽しめる2枚組です。
Author:KonLon
戊子季春開亭
モーツァルト歴:
(まだ?)30年
亭 訓:
文質彬彬
*記事中の一人称「亭主」とは管理人のことです。
詳しい亭主紹介はこちら
*上掲の画像…
プラハ郊外のベルトラムカ荘にて[2006.9.20]...一応階段中央に写っています...
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